雨の日に
春の長雨が続いたある日。
車で出掛けた時のことです。信号が赤になり先頭で停車したところ
横断歩道を自転車に乗った少年が横断駆け抜けていきました。すると
渡り終えた途端に、少年は自転車から飛び降りて、何か探し物をする
ようです。
「何か落としたのかしら?」
「手に持っていたお金を落としたのかな・・・」
少年の表情は悲しそうにも見えてきます。
小学校4、5年生くらいの少年でしょうか。
横断歩道の手前、車道の先頭にいる私は、その様子を
どうすることもなく見ていました。
「車を横付けして、一緒に探してあげようか・・・」
そう思った瞬間、横断歩道を渡ってきた少女が少年の
様子を見て、何かに気付いたようです。
肩から下げたバッグから、メガネを取り出して、雨に濡れ
水たまりになった横断歩道の上を、注意深く覗いています。
しばらくして、信号は青になり、私はそこに気持ちを残して
車を走行してしまいました。
あの少年のお小遣いは見つかったかな?
少女はなんて心優しい子なんだろう。
素敵な映画を見たような気持ちで、その後の
二人のことを考えていました。
とっさの時にこそ、その人の心遣いや優しさが
表れるものです。
少年の気持ちに寄り添い、探してあげた少女の
心の美しさに、窓をうつ雨がなんだか輝いて見えた
四月の昼下がりでした。