その出会いはある日の一本の電話

受話器の向こう側から女性の声

年配と判断されるがとても丁寧な話ぶりで、

しっかりと説明されています。お会いする日時を約束

するとしっかり復唱して確認されています。

その次の言葉に驚いて思わず「エッ？！」と小さな声をだして

しまいました。

「私は９０歳ですからね、無知で失礼な質問をするかもしれませんが、

お許しくださいね。」

そうおっしゃったからです。電話の相手が９０歳とはとても思えない

ほど、聡明な話しぶりです。

私はこれまでに自分自身で勝手に思い込んでいた９０歳の老人像

が恥ずかしくなりました。

数日後、そのお客様にお会いするのがとても楽しみでした。

そのお客様はＳさん。

身なりも美しく整えられて、お独りでお越しになりました。

年齢のことを考え、ご自分が亡くなったときに、娘や息子に迷惑を

かけたくないからと、自宅の借地契約の問題や相続財産のことを

勉強しにきたとおっしゃっていました。

「この歳ですからね、覚悟を決めて生きてるんですよ。

自分のことは自分で考えなくちゃ」

あっぱれなほど、シンプルな宣言です。

今風の言葉で讃えれば「かっこいい！」でしょうか。

「私が相手の立場だったらどうだろう？」と頭の中はフル回転。

細かな点も漏らさず説明しアドバイスしました。Ｓさんの人生の

一助になれることが嬉しくて、私まで張り切ってしまい

ます(笑)

覚悟を決めて生きる。言うは易し行うは難しで、

なかなか出来ることではありません。まだまだ人生修行の今日

この頃です。

しかしながら、仕事も人生も様々な出会いがあるから、

奥が深くて楽しいものですね。

Ｓさんとの出会いに感謝です。